愛とは、憎の反語である。愛は安全、平安平和、和合、安定をつくり、憎は争闘、破壊、不安、抹殺、分裂を生む。
植物は作用によって生きる。
動物は本能によって生きる。
人間は作用・本能のほかに「知・情・意」によって生きる。
植物には意識がないから愛がない。が、本能と意識をもっている動物には、愛がある。况してや意識強烈にして広大、高度の知情意を有する人間には愛が人間性として人間生活を支える大きなはたらきをなしている。
愛とは具体的に何か。人間は本能的に危険や混乱や不安や滅亡を拒み、安全、安定、平安、和合をこよなく求めるものである。この本能的自然の機能を意識化して愛と呼ぶのである。人間として生れて、自分や自分の家族の安全、平安を願わぬものはない。この安全平安を守るはたらきが愛である。そしてこれを可能ならしめる意欲が生長拡大発展して、氏族(一族)に及び、発展して部族(市長村)に至り、藩族(等族-県郡)に及んで民族(国家)にまで進んだのである。やがて人類愛に到達するであろう。いわゆる愛が拡大発展して全人類に及ぶに至るのである。要するに安全・平安・発展を願う心が愛国心である。