いしずえ

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第五章 近代思想

 合理主義

 合理主義とは理性を重んずる立場を謂う。元来は、キリスト教の啓示宗教の超自然主義・超合理主義に対し、理性を重んずる立場の人々を意味している。十六世紀より十七世紀にかけてイギリス、ドイツ、オランダの合理主義者等は、キリスト教会や国家権力に対して、理性の立場を主張し、キリスト教の啓示の事実を、合理的に説明しようとしたものである。以上の通り中世の神中心主義から人間中心主義への転換を物語るものである。所謂、近代西洋の合理主義は権力体制に対する市民階級の改革思想として生まれ形成されたものである。

 トマス・アクィナス
 理性主義の立場と教会の超合理的立場を美事に調和せしめたのは、トマスである。彼は、理性は決して信仰を損なうものではない。寧ろ理性は、神の存在や霊魂の不死を合理的に論証し認識することによって、信仰への準備段階を成すものである。トマスの神学体系は、信仰の立場を堅持しながら、しかも、人間理性の立場を認めるものであって、近代合理主義思想の出発点となったものである。そして理性の立場が強く主張され、啓示信仰の立場を批判し、否定する方向に進んだのが、近代合理主義である。軈てこの枠を越えて理性の立場が主張されるようになったのが十八世紀フランスの唯物論無神論であり、十九世紀に入って自然科学やマルクスの唯物弁証法が現われて次第に一般化した。
 デカルトスピノザライプニッツなど十七世紀の代表的合理主義哲学者等はアリストテレスプロティノス以来の伝統的形而上学思想に由来するもので、純粋な理性的思惟の活動を意味する。が古代のアリストテレスプロティノスは神的な永遠の眞理の世界の方に重点を置いているに対して十七世紀の合理主義哲学者等は、人間の理性の方に重点を置いている。この傾向は十八世紀ロック以降イギリスの経験主義哲学で一層明確になる。人間理性の働きが何処までも経験的であると主張される。

 ヒューム
 十八世紀中頃ヒュームはロックの影響を受けて、従来の形而上学における基本概念である。(世界創造の原因としての神の存在を推論する)実体概念や因果性概念は、すべて経験的な近くの結合または連結に他ならない。また人文科学や史学、経済学などを成り立てた。ヒュームの説が、伝統的形而上学に与えた衝撃は甚大であった。それはキリスト教の神の存在を危くするものであり、神に与えられたとする道徳をも破壊するものと考えられた。

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