いしずえ

『陽明学勉強会』 参加希望の方は kuninoishizuehonbu@yahoo.co.jp まで!!

『儒教と老荘』より

イメージ 1

人間の機械化、かくして日に日に人格は破綻していく

人間が発明し使用する機械が、その発展と共にやがて、主客を'002;倒(てんとう)して人間を機械化するようになった。そのことは分業制度がもたらした人間の部分化と呼応して、はなはだしく人性の円満無害を破壊した。ゾムバルト教授の言のごとく、近代人は全人の跡を没して次第に部分人、支離者が殖(ふ)えてゆく。彼らは常にある一事に役立って、他の何事にも適しない機械的存在である。

加うるにどしどしその触手を伸ばして農村を蚕食(さんしょく)してゆく都市が、人間を群衆生活に駆り入れて、個人生活を奪っておる。都会人は内を顧みて確実に自己を把握する余地なく、群衆に圧倒せられ摂取されて泳いでゆく、そこえもって強烈な色彩や、囂々(ごうごう)たる騒音や、その他あらゆる刺戟、不断の機械的労働のために、彼らは精神生活の余裕を次第次第に喪失する。かくして日に日に人格を破綻するのである。したがって意志のはたらきも衝動的、抽象的、唯物的に堕し、それにつれて感情も浅浮(あさはか)である。