その教えは、堯・舜・禹に相伝えられた「道心は微弱であるから、心の雑念を去ってこれを純化し、ひたすらこれを保持するようにして心を中正にせよ」というのが、その綱領であり、「朋友の道は信である」という五教が、その細目であります。
堯舜三代の世では、教えるものは、ただこれだけを学びました。当時は、人と異なった意見を持つものもいなければ、他と異なった習慣を持つ家もなく、何の苦労もなくこれを行なうものは聖人と云われ、努力してこれを行なうものは賢人と云われ、町や村の農工商人のような、下賤なものに至るまで、みなこの教えを学ばないものはなく、ひたすらその徳行を全うすることだけに務めました。なぜなら当時は、後世のように、雑多な聞見や、わずらわしい記憶暗誦や、見せられる美文や、心をかき立てられる利益を求めることもなかったので、ただ親には孝を尽くし、年長のものにはよく従い、朋友には信をもって交わるようにして、各人がみな是認するところの、本来の心に復らせることができたからであります。ところで、この心は各人の本性に固有しているもので、外から借りてきたものではありませんから、これは誰も出来ない事ではないのであります。
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