いしずえ

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共産党が伸びる理由

 最近の国政選挙、統一地方選挙において、着実に党勢を伸ばし得票率を上げ続けているのは、共産党のみである。3年前の衆院選挙で726万票、昨夏の参院選挙では820万票を獲得し、今春の地方選では地方議会の所属議員数を5割増して、自民党についで第二党となった。世論調査政党支持率調査でも、自民党が21%から24%、民主党が10%から13%あたりにとどまっているのに対し、共産党は6%台から8%台を伺うところまで支持を伸ばしつつある。無党派層の動向も以前とは異なって、共産党に好意的になりつつあることを考えると、次の総選挙で同党が過去最高の40議席から50議席、900万票を取るのではないかという予測も報じられている。

 ソ連・東欧の共産党支配が崩壊し、社会主義の破産が明かになったこの時代に、なぜ共産党が伸びるのか。その理由は幾つか挙げられている。旧社会党自民党との連立以降、本格的な野党が共産党だけになってしまったこと。民主党の中道路線採用で左翼支持層が共産党に期待するようになったこと。不破体制になってから「天皇制容認」などのソフト・イメージ路線を取るようになったこと。

 しかしより本質的な理由は、バブル期とその崩壊を経て、国民が現在の日本の指導層(政・財・官界)に不信感をもつようになり、日本社会の方向性に疑問をもつようになったことであろう。たとえば共産党はただ一党、政党助成金の受取りを拒否している。「政党は自らの党費、事業活動と個人献金だけで財政を賄うべきで、税金から助成金を貰うべきではない」。これは、まことに筋が通った主張ではないか。また「日本の外交はアメリカの言いなりで自分の主張が少しもない。世界からアメリカの腰ぎんちゃくのように思われて、存在感がないのはそのためだ。安保条約を廃棄して真の独立国となったのち、平等な日米関係を築く」。これもまた多くの日本国民の共感を誘うだろう。さらに「日本の地形にはそれに合った農業がある。農業と自然環境を守って食糧自給率を高めよ」「大企業とゼネコン中心の政治を改め、ルールなき資本主義に歯止めをかける」「ルーズな公共事業政策を見直して財政再建を図る」。これらの主張にもうなずけるところは少なくない。

 総じて共産党の主張は、欲望社会、無規範社会と化した今日の日本にかれらなりの公正さと秩序を再建し、国家の自主独立性を高めることに集約される。大政党には国民に訴えるこうした方向性が欠けている。姑息な共産党対策などに頭を痛める前に、自らに課した規律を厳守し、信頼を醸成し、国の未来像をはっきりと示すことだ。無秩序に飽きた国民には「清潔な全体主義」は魅力的に映るのである。

 平成11年6月1日発行  次代 國乃礎より

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