政治改革の前提条件
今日社会問題政治問題経済問題等諸問題はすべてここから発生していると言っても過言ではない。
わが国は肇国以来明治の藩閥政治に至るまで皇室を中心とする一元政治体制を存続して来た国である。
この悪弊を解消する方法は普選を実施するほかないと識者は考え、また除去できるものと信じた。
然るに大正十五年前述せる通りその普選法が行われた結果は旧に倍して尚一層甚だしいものであった。
普選が実施されれば国民を自制せしめ、各個人が自らその責任を痛感せしめ、自発的一切合切正義人道に外れないように行われてゆくものと確信した。
買収汚職贈賄等の違反行為は、制限選挙に伴う罪悪であって、個人を本位とする普選が行われる事になれば、制裁懲罰を俟なくとも、選挙界は清浄となるものであろうという希望と理想と予測は全く裏切られ、妄想であった。
普選の為にむしろ選挙界の醜悪さは普遍化し一般化した。
選挙民の増大に伴ってその買収額も拡大し、政党政治の腐敗堕落もまた拡大増加することとなった。
政治の腐敗堕落はここからおこっているのである。
政治の改革が法律の規制能力で達成しようと試みても、この問題は法で取締りうるものではない。
第一基礎土台が誤っている上に、政治は倫理道徳を超え、善悪正邪の埓外にあって国家国民全体の生存を掌るものであるから国家の基礎土台たる民族の固有性を基本とせねばならない。
固有性は民族の生命であるからである。
特に政党や選挙は比重において、善悪正邪よりも強弱勝敗に重きをおく生存競争の原則に属するものであるから法律論で形付くものでなく、制度そのものそれを構成する思想に着眼し、その上に立って政治改革に当らなければ解決できるものではない。
政治改革が倫理や法律で解決できると信ずるはナンセンスである。
何時までも欧米模倣に踏み止どまるということは創造性なき生理現象に外ならず、老化衰亡は免れるべくもない。