少佐といえば、日本では中年の軍人の筈であるが、こんな未熟な感じの青年が少佐であるからには、重慶軍はよほど指揮官が不足しているにちがいない。
四億ちかい人口をもつ中国では、雑兵に不足することはまずあり得ない。彼らは広い国土と膨大な人口を唯一の武器として、追撃すれば逃避し、撃滅すればどんどん補充して、はじめあれども終る見通しもつかない戦いに、日本軍を呆然たらしめているのであるが、さすがに指導的人間の養成は急速には間にあわないものとみえる。
そのため、このような若い青年を、中級将校として用いなければならないのであろう。
言葉の通じない二人の居候は、食事がすむとさっさと彼らの居室にあてられた三階の部屋にと引あげていき、次の食事時になると、又のっそりと下りてきた。
感謝の表情も気の毒そうなようすもなく、権利をもつもののごとく、平然と食事をし、悠然と立ち去っていく。
食べよごした皿を片づけているわたくしをじろりと見ながら、微笑もうかべずに出ていく彼らの横着さには、なにかしら圧倒されるものさえあった。