いしずえ

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競争に勝って恐竜は滅んだ

 恐竜はなぜあんなに大きくなる必要があったのか、と問われて、ある著名な生物学者は「恐竜の体が大き過ぎたというなら、人間の脳のほうがよっぽど大き過ぎる。不必要に体が大きくて滅んだ生物がいるなら、不必要に脳が大きくて滅ぶ生物がいてもおかしくはないだろう」と答えている。

 恐竜は大きなものでは体調30m、体重20tに及ぶ種類もいて、現在のアフリカ象の数倍も大きいものがざらにいたという。約2億年前から6500万年前までの一億数千万年の間、地球を支配したかれらはあっけなく滅んだ。滅んだ理由は確かではないが、隕石の衝突、植物相の変化など、いずれにせよ地球環境の激変に対応できなかったためと考えられている。対応できなかったのはあまりに巨大すぎたためである。つまり生存競争に適応し過ぎたために、生存条件が変わると、適応することができなかった。

 人間の脳はほかの生物に比べて、異常に大きく、神経細胞も比較を絶して発達している。そのゆえに生存競争に圧倒的な勝利をおさめ、地球を完全に支配した。動植物を自由に食い散らし、資源を利用し尽くし、果ては原水爆を作り出しオゾン層に穴をあけ、その力は地球環境をさえ大きく変えてしまった。しかし人間が地上の支配者になったのはせいぜいこの数千年のことで、今のような力を持つに至ったのはほんの百年ばかりのことだ。

 にもかかわらず、人間は自らの脳の暴走にたじろいでいる。宗教や伝統を迷信、時代遅れと退けて、人間の権利(人権)を至高の尊厳と思い上がってきたが、先進国はどこでもソシオパス(社会病質者)やサイコパス(心理病質者)の激増に苦しみ、理由の分らない犯罪、社会規範の崩壊、人間同士の信頼感の喪失に頭を抱えている。公害、環境破壊で人類が滅ぶのではないかと言われて久しいが、社会の自壊現象のほうが深刻な問題となりつつある。ITなどの科学技術は危機の回避に役立つよりも、社会の解体にむしろ力を貸しているようにみえる。

 自然との共生、地球にやさしい技術、命を大切にする教育、などと掛け声は多いが、いま生きている人間の都合に合せた、上辺だけのスローガンでは解体にはならぬ。生存競争の文明を脱却しないかぎり、人間は恐竜と同じ道を歩むだろう。

 平成13年3月1日発行  次代 國乃礎より

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