2016-01-11 『童心殘筆』より 日記 #哲学・思想 山水養性記 一 四五丁行くと、だらだらと下り坂に為って、却下の渓流から吹き上げる涼風にさやさやと木々の葉が裏返る。 下り盡した所に一宇の地蔵堂が建って居て、大慈大悲の顏をした地蔵尊が、誰の供えたものか、かちかちの小餅をじっと眺めて居られた。 道は左に折れてまた次第に登る。 日の加減で、渓を隔てた向うの峰の色が、すうと暗くなる。どちらを向いても山である。 少し天気が重苦しくなった。 正面の峰の一つ松の梢に、いかにも雷を封じたような雲の峰が聳えて居る。 雲を破ってまた太陽が赫っと光線を投げる。 途端にじーっと油蝉が唸り出した。 ブログランキング・にほんブログ村へ(文字をクリック)