いしずえ

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『童心殘筆』より

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暁風残月の遊



肅々として天地の流れは動く、暁も早近いであろう、私は舷を叩いて拙作の即興詩を低唱した。

人遠く湖玄く山影幽なり
煙波暗き處愁を奈何せん
月傲骨を憐んで詩境を開き
露襟懐を滌うて棹歌發す
星宿森々碧落に懸かり
天風浩々銀河を渡る
五更之に對して驚き死なんと欲す
一夜靑衿白髪多し。

私は終に天地の玄に堪えずして、船を棄てゝ渚に下りた。満身の風露、天は将に暁ならむとす。
~大正十二年同前~