いしずえ

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『天地有情』より

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世は移(うつ)ろえども、本当に無方向(disoriented)で何処(どこ)に往く

いかにも人間というものは、苦難に耐えるよりも安逸(あんいつ)に耐える方がはるかに難しい。川が滔々(とうとう)として海の中に消え去るように、好(い)い気な流行というものは、いつのまにか時勢という波瀾のなかに消散してしまう。衆人は日常いろいろ気使いは激しいが、精神の方はとんと働かない。因襲に慣れて愚味である。

世界の政治という大舞台についても同様である。日々の事件と情報は大変なものであるが、試みに一九四五年の終戦時にさかのぼって、それからのわずか四半世紀二十五年の変遷を記録によって点検してみると、実に驚くべき愚味と錯覚に充ちている。やはり賢者の教えの通り、この科学技術革命に勝るとも劣らぬ精神革命が行われぬ限り、そしてそのことは他人事でなくて、実は各人の自己革命に存することであるが、それなくしてこの文明と人類はとうてい救われるものでない。