いしずえ

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『経世瑣言』より

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非常のことは成し易く、尋常のことが成し難い

繰返していう、非常のことは成し易く、尋常のことが成し難い。砲煙弾雨の中に敵と戦うに際しては吝(けち)な私というようなものはけし飛んでしまうが、平常の生活となると、その私が頭を出す。その私は奇利を得ようとし、名聞を博そうとし、権勢を張ろうとする。

天下が平和で、生活が秩序立っている時は、そういう野望はなかなか達成出来ないが、世の中の動乱はそういう野望に僥倖(ぎょうこう)の機会を与える。それ程ではなくても、人間につまらぬ見栄(みえ)というものがあって、世間がものものしく色めき立って来ると、自分も何かしら人目につくようなことをやって見せねば面目が立たぬように考えて、身の程も知らず、人の迷惑も憚(はばか)らず、軽挙妄動(けいきょもうどう)しがちなものである。天下本(もと)無事、小人之を擾(みだ)すのみとか。