いしずえ

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安岡正篤(著) 『新篇 現代の道標』より

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天網恢々(てんもうかいかい)、疎にして漏らさず。因果応報の理は、いささかも違(たが)うことはない

何人も心を打たれる大きな事件が頻発する現代世界に、またとかく雑然紛然として毎日を空費しやすい日々の生活に、最も大切なことの一つは、時に独りになって静坐し黙想することである。社会の現状はほとんど個人の反省や自由を許さないほど圧倒的な力を以て千変万化してゆくようであるが、たまたま少し静観する余裕を持つと、案外それも古来変わらぬ単純な理法に律せられているようである。

老子に「天網恢々、疎にして漏らさず」という名言がある。天のうつ網は目があらいようでも、ちゃんと逃がさないものだという意味であるが、この頃つくづくこの語の妙味に感嘆する。天の作(な)せる災いは逃れることはできても、人のしでかした災いは逃れることができない。自業自得である、少し長い目で観る時、少し深く事実を洞察(どうさつ)する時、因果応報の理は厳としていささかも違うことはない。我々は眼前の浮雲のような現象や、紛々たる曲学阿世の論に少しも惑う必要はない。