いしずえ

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『童心殘筆』より

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山水養性記



何にも飾りの無い淡泊な室である。

壁に石濤の寒流に枯葦を描いた雅な一幅が懸って居て、床の間には誰がやったか、木を抉って樸拙な彝(禮器)に象り、巧に長尾猿を彫刻したものが一つ坐って居る。

それにまた何とも云へぬ妙味がある。

ふりかへると、隔ての襖の鴨居の上に永平悟由の古教照心、部屋の真中を一疋の巨大な山蟻がのっしのっしと奥の方に歩いてゆく。

「やーい藏六」泉水の畔のうづくまって小儈先生頻に岩の上の亀に悪戯して居る。

其の邊は如何にも無邪気である。