いしずえ

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『童心殘筆』より

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温泉行

「お母ちゃんは……?」

「お母ちゃんはね、もうちいちゃんの汽車が着く頃だろうと思って停車場に待ってゐらっしゃるよ。」

「ちよーお」子供はさも心細そうにうなづいた。しばらくするとまた父親の膝をゆすり始めた。

「お母ちゃんどうちたの?……」

「お母ちゃんは停車場で待ってゐらっしゃる、ね、ね、もう少しだ、もう停車場を五つほどでね、鹽尻につく。そうするとお母ちゃんがお迎えして下さるよ」