いしずえ

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『童心殘筆』より

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雲水



二十五日の夕私は観音崎にさしかゝった。後は山を負い前は蒼茫たる浦賀水道である。サーッサーッと白い雪線を引いて蘆の葉を越ゆる波の音に永遠の寂寞が籠ってゐる。

寂寞に住せよ、寂寞に住せよと心は語る。寂寞に住する時無邊に生く。西行芭蕉も寂寞では有ったが無邊の子であった。聖者は皆寂寞の無邊に生きる。佇んで仰ぐと夕星が燦として輝いてゐる。

夕づつの光よ照せわが胸の
 闇は深くておぼつかなかり
夕づつの光はるけき大空に
 ゆくへも知らぬ吾心かな