いしずえ

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『東洋倫理概論』より

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職業に貴賤はない、仁を成し得ること偉大なほど、その職業は貴い

いかなる職業でも、仁を求めて仁を得ぬことはない。その職業を通じて仁を成し得ること偉大なほど、その職業は貴い。宰相の職が薬屋より貴いと考えられるのは、宰相の職は一薬屋の到底及びもつかない大なる仁を成し得るからである。それにも拘(かかわ)らず、身宰相の職に在りながら、民の疾苦を救うことも出来ず、徒(いたずら)に俸禄を費したり、或はその公器を弄んで私利私欲を恣(ほしいまま)にするならば、それこそ市井(しせい)の一商人にも劣るもので、職を辱(はずかし)め、身を汚し、不忠不幸此の上も無いと謂わねばならぬ。

之に反して我々は五反の田を耕しながらも、真に仁を求むれば、凡庸な農夫の数倍の収益をも実現して、国家の人口食糧問題の解決に大なる光明をも与えることが出来る。質屋の主をしながらも、細民に自由に且つ簡単に金融の便を与え、同時にいつか富を為すことも出来、真に憐(あわれ)なる人々を救う大侠(たいきょう)ともなり得るであろう。然らば農夫、市人(しじん)も王侯に伍して些(いささ)かの遜色(そんしょく)も無い。