いしずえ

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安岡正篤(著) 『王陽明研究』より

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善と悪、我々の心的作用は自己を実現せんとする努力であり、葛藤である

この善悪の問題は人間に絶えず不安と執拗(しつよう)とを以て迫るのであるが、それが畢竟(ひっきょう)我々の欲求より起こるとすれば、いかなる場合に善といい、悪というか。かくのごとき善悪を超越した絶対者が我々のどこにあるか、それを是非とも体得せねばならぬ。

元来我々の心は無限に複雑な部分から成立しているが、それらの部分は互いに没交渉な独立的存在でなくて、すべて相互に他を待って存立し、究極・一全体に体統せられている体系的存在である。表面上雑多の集合のようであっても、中にこれらを必然的関係において成立せしむる統一原理が働いている。換言すれば体系はかくのごとき統一者の自律自展である。我々の自己或は良心とは、つまり心の根底に活動するこの統一者の謂であって、一切の心的作用はすべて皆自己を実現せんとする努力であり葛藤である。それで我々は不断に様々な統一を求めている。その最も根本的な形式が意志であって、この場合統一の対象は意志の目的すなわち理想となって現れ、この統一を了した時、すなわち目的理想を実現した時、満足の感情を生ずる。