「致良知」は「良知を致す」とも読みます。
「良知」とは、人間が生まれながらに持っている是非善悪を判別する心のこと。
「致す」とは発揮する(磨く)ことで、「良知」を磨くことが「致良知」です。
王陽明は、人の心を明鏡に例え、くもりのない鏡面が万物を正しく映すように、人も胸のうちに持っている明鏡(心の鏡)がくもらないよう、常にこれを磨かなければならないと言っていますが、このくもりのない明鏡が「良知」です。
人間は利己的になると良知にくもりが生じます。
良知にくもりが生じないよう、実践的な努力をしなければなりませんが、それは「格物」ということによって達成される、と方谷は言います。
「格物」の「格」とは、「正しくする」という意味で、「物」とは「物事(一つの事柄一つの行為)」のことです。
つまり、一つの事柄一つの行為を正しくする実践のことを「格物」と言います。
この「格物」と「致良知」が二本の柱となって「誠意」が実現できるというわけです。
<入門 山田方谷 至誠の人>より