日本人は大のお風呂好き。しかし、正しい入浴法を誰かから教わる機会はなかなかありません。この連載では、温泉・お風呂の医学研究者である早坂信哉が、現代人が知っておきたい入浴法について語っていきます。
温泉は普段のお風呂のスペシャル版ともいえます。普段のお風呂よりも気分的にも解放感があり、全身のこりや冷えに効能を感じられるものです。
温泉と同成分の入浴剤もありますが、温泉は成分だけでなく温泉地には景観や気候、地形などの刺激があり、それが心身にトータルに作用して総合的生体調整作用というものを生みだします。
そのために、さまざまな効用がもたらされるのです。
連載の最後となる今回は、温泉療法の専門家である私が、温泉の効果や正しい入り方についてお伝えしていきます。
■温泉に1週間いると効果が表れる
温泉は心身にトータルに作用して総合的生体調整作用を生みだすと言いましたが、温泉地に1週間も滞在すると、あるモルモンが基準より高い人は下がり、低い人は上がる効果があります。
湯治は、人間の身体のバランスを正常値に近づけてくれることがわかっています。
湯治で起こる総合的生体調整作用は、1日、2日では起こりません。しかし、1週間ほど滞在すると、効果が表れます。
それでは、ずっと滞在すればもっと変化するかというと意外にそうでもありません。
人間は環境に慣れてしまう生き物なので、1週間を過ぎると、劇的な変化がなくなります。湯治は昔から、“ひと巡りで7日間”といわれる所以です。
■知っておきたい泉質ごとの効果
せっかく温泉に行くなら、自分に合った温泉がいいですよね。そんな温泉を選ぶために、泉質による効果の違いをみていきましょう。
(2)二酸化炭素泉・・・運動麻痺、筋・関節痛、打撲、高血圧、切り傷、冷え症、末しょう循環障害、自律神経不安定症など
(3)炭酸水素塩泉・・・筋・関節痛、打撲、切り傷、皮膚乾燥症など
(4)塩化物泉・・・筋・関節痛、打撲、ねんざ、冷え症、末しょう循環障害、うつ状態、皮膚乾燥症
(5)硫酸塩泉・・・石膏泉はリウマチ、打撲、切り傷など、芒硝泉は高血圧、外傷など、正苦味泉は石膏泉&芒硝泉と同様
(6)含鉄泉・・・貧血(飲用)、リウマチ、神経痛、自律神経不安定症、疲労回復など
(7)硫黄泉・・・高血圧、アトピー性皮膚炎、慢性湿疹、関節痛など
(8)酸性泉・・・神経痛、冷え症、アトピー性皮膚炎、糖尿病など
(10)含よう素泉・・・高コレステロール血症(飲用)
■効果が薄れてしまうNG入浴法
ただし、温泉は入り方によっても効果が高まったり、逆に薄れてしまうこともあります。注意点を以下にまとめます。
・せっかくだからと1日に何度も入浴する。体に負担がかかって逆効果になることも。一般的には1日に2~3回が目安
・入浴の合間には、水分補給と休息を忘れずに
・入浴時間は、汗が流れたり、顔が赤くなったら出る。熱い湯なら2~3分ででる
・温泉から出た後にシャワーを浴びると、せっかくの効果も薄れてしまう。体についた水滴をぬぐう程度がベター(ただしかぶれやすい人はシャワーを)
・温泉を飲むのは、飲泉許可のある温泉で成分や適応症をよく確認してから
主成分により、温泉療法は10種類に大別されますが、温泉は自然の産物ですから、含まれている成分を見てもひとつとして同じ温泉はないといっても過言ではないのです。
泉質からいくつかの温泉地を肌で試し、その中からさらに自分の体質に合った温泉を見つけるとよいと思います。