いしずえ

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『童心殘筆』より

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温泉行

とても無心に書を読むことも出来ねば、静かに考えることも覺束ない。

こんな中に捲きこまれて莊子に所謂「性を俗學に繕め、慾を俗思に滑って」居たのでは、日に日に人間らしさを失ってゆく。

ある學者が動物の幼時を研究して、人間の兒童期に人間ならでは見られぬある「けだかさ」を發見したが、その折角の特徴も段々人間が手取るに隨って消滅し、却って猿の様な徴候を現すものである。

然し人間はいつか年を取ってもその幼少期に現れる様な「けだかさ」が體現せられる時が来ねばならないと云って居るが、さもあらうと感ぜられる。

一體人間は時に家をも離れ、愛する妻子からも逃れるがよい。

親子夫婦は人倫の大道に相違ないが、兎角家庭の中に温まり、妻子の間に甘えて居ると、雄心鎖盡して脆弱に流れてしまう。

「子を抱いて我れ老いにけり秋の月」では耻づかしい。