いしずえ

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『政治家と実践哲学』より

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政治家には、人を知り、人を用いる徳が必要である

政治の要訣は結局人を知り、人を用ふるの一点に帰する。如何に自ら手腕力量があって、如何に自ら出世しても、人を知るの明無く、人を用ふるの徳が無かったならば、政治家として談ずるに足りない。近代政界の根本的弱点は名士が斉(ひと)しく人を知らない点にある。一旦自ら顕要の地位に就いても、先づ抜擢(ばってき)登用すべき人材を平生に於て物色し締交(ていこう)して居らない。甚しきは使命に備ふべき秘書役一人持たぬ者も少なくない。かくして何の力あり徳ある政治が行えるであろうか。

太宗真宗の名相であった呂蒙正は平生手提袋の中に一冊の手帳を入れて置いて、各方面の役人が更迭(こうてつ)の際など挨拶に来るたびに、必ずその地方の人材を問うて、客去れば之をその手帳に分類記入して置いた。政府に人材を求めるようなことがあれば、彼はそれを嚢(ふくろ)の中から取り出した。彼は言った、「わしは誠に無能じゃ。ただ一能がある。善く人を用ふること、これだけだ。」