いしずえ

『陽明学勉強会』 参加希望の方は kuninoishizuehonbu@yahoo.co.jp まで!!

第三章 古代思想

  ユダヤ思想-旧約聖書

 キリスト教の生みの親はユダヤ教である。それは旧約聖書に記載されているところであり、本来旧約は古代に属するが、中世に開花躍動するキリスト教と不離不可分の関係があるので中世に纏めて説くことにした。

 ユダヤ人は古代に於いて四度エジプト、バビロニアアッシリア、ローマの異邦人、他民族の奴隷にされた。その期間実に一千年(四千年前-三千年前)に及ぶ、後、紀元前数年前の頃ローマ帝国に滅され爾来約二千年の久しい間亡国流浪の生活を続けて来た人類史上例を見ない悲惨な民族である。有史四千年のうち奴隷千年、流浪四散の旅を二千年つづけて来た民族である。この異常な辛苦艱難な生活体験が却って内面的な精神的鍛練訓練を重ね、民族的団結を強化し、共同体性を深め神との契約意識を生じ、神への絶対信仰をつくりあげたのである。

 ユダヤ人は如何なる迫害にあっても神の予言を信じ神を信仰し、民族魂を守り通して来た。むしろ他民族や異邦人に苛められれば苛められる程、神に祈り、神に縋り、神に救を求めて民族的団結と統一を培って来た。彼等の反骨精神は骨の髄まで徹し、その反抗心を選民精神に変え、救世民に変えたのである。

更にこの強烈な信仰心と永い奴隷生活の試練は何ものをも征服せずにはおかぬ忍耐力を養い、被圧迫民を征服支配者にし、奴隷民を人類世界の解放者にし救世民に昇華せしめたのである。いわゆる彼等ユダヤ人は彼等と同一の境遇に呻吟する世界の各国の被圧迫民や被支配者大衆を捉え救済して解放し悉く信仰者にしたのである。つまり、ユダヤの民衆の苦しみと悩みは、基本的には、ローマ帝国内の貧しい民衆の苦しみと同じものであった。それを捉え救済して信仰者にしたのである。

   (43 43' 23)